不注意優勢型のイラスト

不注意優勢型

――「心ここにあらず」の天才肌

ふとした音、浮かんだ言葉、昨日の夢の続きを思い出しているうちに、今やっていたことがすっぽり抜け落ちる。「なんで立ち上がったんだっけ?」が口グセ。でも、あなたの頭の中では、他の人が思いつかない発想やイメージが次々と広がっている。集中できないのではなく、“ひとつに絞りきれないほど広く見えている”のかもしれない。不注意型の「うっかり」には、まだ見ぬ才能が眠っている。

弱み

不注意優勢型の朝は、頭の中に雲がゆっくり流れるように始まります。目覚ましが鳴り、起き上がろうとすると、その雲はすぐに昨日の出来事や好きな曲のサビを映し出し、気づけば布団の中でぼんやりと時間が過ぎてしまう。「遅刻するかも」とは思うのに、体はまだ夢と現実の間で揺れている――そんな“のれん越し”のような感覚が、このタイプの特徴的なスタートです。

いざ動き出しても、制服を探している途中で読みかけの小説が視界に入り、「ほんの数行だけ」とページをめくるうち、時計の針が想像以上に進んでいることに気づきます。持ち物をまとめて玄関に立った瞬間、鍵が見当たらない。探しはじめると、昨日のプリントを鞄に入れ忘れたことを思い出し、鍵探しを後回しにしてプリントを探しに戻る――タスク同士が互いに“割り込み再生”し、最初にやるべきことが抜け落ちていくのです。

学校や職場でも同じ現象が続きます。授業の説明を聞いている最中、窓の外を飛ぶ鳥の動きが目に入り、「あの鳥は渡りの途中かな」と考えが逸れる。次に意識を戻したときには、先生が黒板の半分を書き終え、ノートにはぽっかり空白が残る。話し合いの場面では、友だちの提案を真剣に聞いていたつもりが、突然「昨日見たドラマの結末」が頭を横切り、返答のタイミングを逃してしまう。本人は「さっきまで話を聞いていたのに」と戸惑い、周囲は「興味がないのかな」と誤解する――これが、不注意優勢型が抱える典型的なギャップです。

時間の流れも不思議な形に歪みます。退屈な作業では、五分が五十分にも感じられるのに、好きな動画を眺めていると一時間が五分で過ぎ去る。「あと十分あるから大丈夫」と思って資料を読んでいるうち、十分どころか授業のチャイムが鳴り終わる。こうして先延ばしと追い込みが同じ日に共存し、終わらないタスクが夕方に雪だるまのように大きくなることもしばしばです。

失くし物や締め切り忘れが続くと、「注意力がない」「やる気がない」と評価され、自分でも「また失敗した」と落ち込みやすくなります。緊張と不安はさらに集中力を削り、些細な抜け漏れが次の抜け漏れを呼ぶ――そんな負の連鎖が、このタイプを悩ませる大きな要因です。

強み

とはいえ、その雲のような意識は、ほかの人には見えない景色を映し出すスクリーンでもあります。まず大きな強みは 想像力の広がり です。視線がさまよいやすいぶん、目に入った断片を自由につなぎ合わせる力が高く、数学の問題でユニークな解き方を思いつく、理科の自由研究で意外なテーマを選ぶなど、枠から飛び出した発想を自然に生み出します。

次に輝くのが ハイパーフォーカス。興味のスイッチが入ると、ふだんの散漫さが嘘のように消え、周囲の音を忘れて深く没頭できます。好きなイラストを描くとき、細部の影までこだわり続けたり、読み始めた本に夢中になると一日中読み続けたり――この集中の深さは、専門分野を極めるうえで大きな武器になります。

さらに、不注意によって日常的に「困った」を経験しているからこそ、共感と観察のまなざしが育ちやすい傾向があります。友だちが発表で言葉に詰まると、「そういうことあるよね」と自然にフォローしたり、周りから取り残されがちな人に気づいて声をかけたり――自分の抜け漏れで感じた不安を、他者への思いやりへと変換できるのです。

この力を活かすためには、便利なアイテムを“第二の脳”として活用することが有効です。タスクを付箋に書き出して視界に貼る、忘れそうなことはスマホでリマインドする、タイマーを押して作業開始を開始し、時間を“見える化”する――こうした工夫で、苦手な作業を外部に任せます。そして、ハイパーフォーカスが始まったら無理に止めず、終わったあとに達成感を味わう習慣をつくる。そうすると成功体験が増え、自己肯定感も育ちます。

不注意優勢型の脳は、空に浮かぶ風船のようなものです。ひとつのことに集中しようとしても、風に流されてふわふわと別の方向へ飛んでいってしまう。でもその風船は、ときに思いがけない景色やアイデアを見せてくれます。大切なのは、必要なときにそっとリボンを手に持ち、少しだけ引き寄せること。風船を無理に押さえつけるのではなく、自由に漂う時間と、つなぎ止める瞬間のバランスを取ることで、このタイプならではの魅力がいちばん輝きます。注意の散りやすさも、想像力の豊かさも、どちらもあなたの一部なのです。

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